今回はUnityでのゲーム開発に関するニッチな話題で
Unityで作った自作ゲームを中国語に対応させる方法
を丁寧にご紹介するという内容になっております。
Steamなどグローバルなストアで自作ゲームを販売する際は多言語対応がほぼ必須ですから、自作ゲームを色々な言語に対応させたいなという方も多いと思います。このとき知っておきたいのが英語の次に需要があるのが中国語だということです。
例えばSteamの統計情報のページを見てみると、執筆時点の最新情報(2025年3月分)ではユーザーの使用言語の割合は英語が36.5%・次いで中国語(簡体字)が25%となっています。

つまりSteamの場合4人に一人は中国語ユーザーであり自作ゲームの販路を広げるなら中国語(特に簡体字)に対応するのが望ましいといえます。
しかし自作ゲームを中国語に対応させるにあたってはいくつかの壁があります。例えば
- 中国語は分からないので翻訳の質を確かめようがない
- 中国語は文字数が多すぎて、全ての文字をTextMeshProのフォントアトラスに収めることができない(→どうやって必要な文字だけを抽出すればいいのか?)
といった部分ですね。実は私自身、中国語対応は一つの目標だったのですが上記のような壁があり具体的なやり方がよくわからず長年実現できなかったという経緯があります。
しかし最近になって「いい方法」を思いつき無事中国語に対応できるようになったので、ここではそのやり方を詳しく書いてみようと思います。
基礎知識:中国語の表記方法は大きく分けて2種類ある
まずはじめに、自作ゲームの中国語対応のやり方をご紹介する前に最低限知っておくべきことがあります。それは中国語の表記方法は大きく分けて2種類あるということです。
中国語には「簡体字」と「繁体字」という2種類の表記方法があります。簡体字はその名の通り画数が少なめの漢字が使われる表記法で、主に中国本土などで使われています。一方繁体字は画数の多い難しい漢字が使われる伝統的な表記法であり台湾や香港など一部の地域で使われています。
ユーザー数的には簡体字のほうが圧倒的に多いので、とりあえず中国語に対応してみようかなという方はまずは簡体字への対応を優先するのがよいと思います。
自作ゲームを中国語に対応させるための主な手順
ではここからが本題で自作ゲームを中国語に対応させるための主な手順をご紹介していきます。具体的なステップは次のとおりです。
- 対話型AIを使って元のテキストを中国語に翻訳する
- 翻訳したテキストから「テキスト内で使われている文字」だけを抽出する
- 中国語のフォントを用意する
- 用意したフォントと、抽出した文字を使ってTextMeshProのフォントアトラスを作成する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
手順1:対話型AIを使って元のテキストを中国語に翻訳する
まずは対話型AIを使って元のテキスト全てを中国語に翻訳していきます(※このあと文字を抽出するために、UIや会話などゲーム内で使うあらゆるテキストを翻訳しておく必要があります)。
翻訳といえば「Google翻訳」や「DeepL」がありますが、ここではChatGPTなどの対話型AIを使って翻訳するのが肝となります。それはなぜか?下記のような理由があるからです。
中国語が分からない状態で翻訳するときは対話型AIのほうが都合がよいから。
- 元の文のニュアンスをより適切に汲み取ってくれたり、一貫性のある翻訳をしてくれたりする。
- 「なぜその翻訳になるのか?」という理由を尋ねることができる
- 翻訳の修正をお願いできる
英語のように自分である程度理解・手直しできる言語なら機械翻訳のほうが断然手軽ですが、全然分からない言語の場合は対話型AIを使ったほうがいいと思います。というわけで私はChatGPTを使いまくってゲーム内のテキストを中国語に翻訳しまくりました。
なお対話型AIを使って自作ゲームの翻訳の質を高める方法を他の記事でご紹介しているので、ご興味のある方はそちらも併せてご覧頂ければと思います(※下記記事では英語への翻訳を扱っていますが他の言語への翻訳でも十分活用できます)。
手順2:翻訳したテキストから「テキスト内で使われている文字」だけを抽出する
次に、翻訳した中国語のテキストから「テキスト内で使われている文字」だけを抽出します。抽出に使えるツールはいくつかあるようですが、ここではMeryという高性能な無料テキストエディタのマクロ機能を使ってそれを行うことにしました。
まず、Meryは下記の公式Wikiからダウンロードできます。
次にMeryに下記のマクロを導入してください。
導入方法は、上記ページのマクロ(Javascript)をMeryのインストールフォルダ内にある「Macros」フォルダに入れてそのうえでMery側から当該マクロを登録すればOKです。
あとは翻訳済みの全テキストをMeryに貼り付けて先ほどのマクロを実行すれば文字を抽出することができます(※マクロを実行すると元のテキストは消えてしまうので予め保存しておくなどしてください)。
手順3:中国語のフォントを用意する
お次は中国語のフォントを用意します。中国語の無料フォントはGoogle Fontsで探すのがおすすめです(まあ中国語フォントに関してはあんまり種類が無いようですが…)。ゲームへの埋め込みもできるOpen Font License(OFL)であることを確認してからダウンロードしましょう。
フォントはどれでも好きなものを選んで頂いて構いません。私の場合は「Noto Sans Simplified Chinese」を使うことにしました。
手順4:用意したフォントと、抽出した文字を使ってTextMeshProのフォントアトラスを作成する
ここまでできたらあとはTextMeshPro用のフォントアトラスを作るだけです。フォントアトラスを作るにはTextMeshProに搭載されている「フォントアセットクリエイター」を使います。
設定はお好みで構いませんが「Character Set」は「Custom Characters」を選択してください。すると「Custom Character List」というテキストエリアが出現するので、そこに抽出した文字を貼り付けましょう。
これで「Generate Font Atlas」ボタンを押せばフォントアトラスが生成されます。

私のゲームの場合はテキストの量がそこまで多くなかったので、2048x2048pxのアトラスに余裕で収まりました。もし全ての文字を含めるとしたら一番大きなアトラスにも収まりきらないと思います。そのことを考えると必要な文字だけを含める方法は中国語の場合かなりの容量削減になりますね。
実際に自作ゲームを中国語に対応させた例
最後に、今回の方法を使って実際に私のゲームを中国語(簡体字)に対応させると次のようになりました。


これで日本語と英語に加えて中国語にも対応できたので大満足です。
おわりに
以上、Unityで開発した自作ゲームを中国語に対応させるためのノウハウをご紹介しました。中国語に対応できれば確実に販路が広がると思うので、より多くのユーザーに自作ゲームを届けたいという方はぜひ参考になさってください。
この記事がゲーム開発のお役に立てば幸いです。