Steamで自作ゲームを売る前に知っておくべきことまとめ【ゲーム開発】

Steamで自作ゲームを売る前に知っておくべきこと ゲーム開発

今回はSteamで自作ゲームを販売したいなと思っている方向けの話題で

を一通りまとめてみるという内容になっております。

以前、Steamで自作ゲームをリリースするための手順や注意点についてまとめた記事(下記)を公開したところ大変な反響がありました。

上記の記事では具体的なリリース手順を詳しくご紹介したので「もうSteamで自作ゲームを売るって決めたよ!」という方はそちらの方をご覧いただければと思います。ただゲーム開発者の方の多くはSteamでゲームを売ってみたいと思っていても

  • 正直儲かるのかなぁ
  • Steamでは辛口なレビューがつきそうだな

といった不安を抱えてリリースするかどうか決めかねていると思います。

そこでここでは「Steamで自作ゲームを売るかどうか迷っている」という方のために、実際にSteamで自作FPSを販売している私が僭越ながらアドバイスをさせて頂きますね。

はじめに:Steamをナメてはいけない

まずはじめに、Steamでゲームを売ろうかな・売ってみたいなぁと思っているゲーム開発者の方にぜひ知っておいて頂きたいことがあります。それはズバリ

ということです。

ゲーム開発をしている方のXやブログ・支援サイトなどの投稿を拝見していると、たまに

  • 自作ゲームをSteamでリリースすれば何となく売れそう
  • ぼくの作った最高のゲームなら勝手に売れるよね!

などと完全に舐めてかかっている方がいらっしゃいます。しかし実際のところSteamは非常に競争が激しく過酷なマーケットなので、そんな甘々な考え方では爆発四散すること間違いなしです。

具体的にどの辺が厳しく過酷なのかというと次のような点が挙げられます。

  • ゲームを1本登録するのに15000円必要
  • ゲームのリリース作業がかなり大変
  • 話題性のないゲームは速攻で埋もれる厳しい世界
  • セルフパブリッシングならマーケティングが超重要
  • 売上から手数料や税金をガッツリ差し引かれる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

ゲームを1本登録するのに15000円必要

まず1つ目の関門はゲームを1本登録するために15000円必要だという点です。…大半のゲーム開発者の方はこの事実を知っただけでSteamに自作ゲームを出すのを諦めることでしょう。なんたって大金ですからね!

というわけで自作ゲームをSteamでリリースするかを検討する前に、「自分のゲームは本当に大金を払ってまでSteamで出す価値があるのか?」という点について胸に手を当ててよく考えてほしいと思います。もっともこの登録料は一定以上の利益を出せば返却されるので、本当に売れる自信があるのなら遠慮なく支払えばいいでしょう。

ちなみにSteamが登録料を徴収している理由は「粗製乱造のクソゲーを出すのを諦めさせるため」というのが大きいと思います。しかしそれでも私みたいにクソゲーを出す猛者がいるのはまあ…仕方のないことですね。

ゲームのリリース作業がかなり大変

次に2つ目の関門はSteamでゲームをリリースするのはかなり大変だということです。

この点に関しては冒頭でご紹介した別記事をご覧いただければすぐにわかるのですが

  • まず開発者登録が超絶面倒くさい
  • ゲームの登録作業もかなり面倒くさいし、Steamならではの謎ルールがあったり、登録サイトのUIが不親切だったりするので初見だと絶対どこかで詰まる
  • 困ったらサポートに問い合わせてもいいが全部英語でやり取りする必要がある

といった面倒&分かりづらいことのオンパレードだからです。なのでSteamでゲームをリリースするならこの点は覚悟しておく必要があります。

話題性のないゲームは速攻で埋もれる厳しい世界

ここまではリリース前の関門についての話でしたが、Steamの本当の恐ろしさはリリース後にあります。なぜなら話題性のないゲームはリリース後に速攻で埋もれて二度と日の目を見ることはないからです。

具体的に言うとリリースした後すぐに10件以上のレビュー(※注)がつかない場合、目立つ場所から追放されてしまいます。そして一度こうなると大幅な割引を打ち出してもなかなか売れません。つまり話題性のないゲームは存在自体が抹消されるに等しく、元々売れないのにますます売れなくなってしまうというわけです。


※注:
なおこのレビュー数には「キーで有効化したユーザーのレビュー」は含まれません。つまりタダで配ったキーでサクラレビューを書いてもらってもダメだということです。Steamで実際に購入したユーザーのレビューが重要になります。

あとついでに言うとレビューは好評でなくても露出には問題ないそうです。もちろん「おすすめしない」が大量についた場合は目につかない場所に追放されてしまうようですが、普通はそんなことにはならないので「賛否両論とかだと注目されなくなっちゃうのかなぁ」と心配する必要はありません。

セルフパブリッシングならマーケティングが超重要

四つ目は↑の話と関係がある内容で、セルフパブリッシングならマーケティングがとても重要だということです。

Steamで自作ゲームを売ろうと思っている方の多くは、パブリッシャーと組むのではなくセルフパブリッシング(=自分でゲームを宣伝して売ること)をやろうとしていると思います。しかしこの場合に問題となるのが

宣伝力・宣伝量が圧倒的に足りない

ということです。

そもそもほとんどの方は無名のゲーム開発者でしょうから、たとえSNS等で宣伝したとしても「そのゲームを買う可能性のあるお客さん」には全くと言っていいほど届きません。それこそ万バズにでもならない限り話題になることはなく結果としてリリースしても速攻で埋もれるなんてことになってしまいます。

まあ要するに、たとえ面白いゲームを作るのに成功してもマーケティング的な部分で失敗すると売れないということです。そしてゲーム開発者の方の大部分はマーケティング的な才能を持ち併せてはいないので、せっかくSteamでリリースした自信作が売れないなんて事態に陥ってしまうのです。

売上から手数料や税金をガッツリ差し引かれる

最後に五つ目として、Steamでは売上から手数料をガッツリ持っていかれる点を忘れてはいけません。Steamの手数料は「売上から税金を引いた後の金額の3割」なので

Steamの手数料=(売上ー税金)×0.3

で計算できます。

ではあなたの取り分がどの程度になるかを簡単にシミュレーションしてみましょう。例えば販売価格1000円のゲームをSteamで売った場合について考えてみます。税金は購入が行われた国や州によって様々ですが、仮に売上の10%として計算すると

  • 販売価格:1000円
  • 差し引かれる税金:1000×0.1=100円
  • 手数料:(1000-100)×0.3=270円
  • あなたの取り分:630円

となります。つまり売上金額の6割程度しかゲットできません。悲しいね…。

さらに意外な盲点ですがSteamからの支払いはドル建ての外貨送金になるので、売上の利益を受け取る際に受取先の銀行によっては追加で数千円の手数料を支払う羽目になることもあります。このようにSteamでゲームを売る際は意外と儲けが目減りしてしまうのです。

もしかしたらSteamでゲームを売ればガッポリ儲かるようなイメージがあるかもしれませんが、きちんと儲けるためにはゲームを高めの値段で売るか、そうでなければ大量に売る必要があります。…これは簡単なようでいて非常に難しいです。ま、身も蓋もないことを言うとSteamで儲けるのは決して簡単ではないということですね。

まずはSteamの客層を考えてみよう

さてそんなわけで出だしから長々とSteamをナメるなよという脅しをかけてしまいました。しかしそれでも「できればSteamで自作ゲームを売ってみたい!」と思っている頑固でやる気のある方のために僭越ながら有益なアドバイスをさせて頂こうと思います。

Steamで自作ゲームを売るかどうか判断するためには「Steamで売れやすい・話題になりやすいゲーム」を知っておくと役に立ちます。ただそれを理解するためにはSteamの客層について考えておく必要があるので、ここではその点について私なりに書いてみようと思います。

Steamの主な客層は「コアゲーマー」

まず、当然ながら私はSteamの従業員ではないので正確な客層は知りようがないのですが、イメージでいうとSteamのユーザーの多くはコアなゲーマーだと思います。

具体的には

  • 高性能なPCでゲームをすることを生きがいにしている
  • 面白くて長く遊べるゲームに飢えている
  • 面白いゲームを安く買うために日々目を光らせている
  • ゲームをコレクションすることに喜びを感じる習性がある

といった特徴があると思います(…というか私自身がそんな感じのユーザーです)。

要するに目の肥えたお客さんが大半なので、生半可なゲームではなかなか手に取ってもらえないというわけです。

Steamで売れやすい・話題になりやすいゲームとは?

次に上記の点から考えるとSteamで売れやすいゲームはコアゲーマーにウケるゲームです。具体的には下記のようなゲームが該当します。

  • 話題性がある(面白くてみんながやっている…等)
  • 長時間・繰り返しプレイしても楽しめる
  • 内容が充実している割に安い

ジャンルでいうなら

  • 長編RPG
  • ストラテジーゲーム
  • ローグライクゲーム
  • カードゲーム

あたりが王道で人気が高いようですね。

あと少々邪道ではありますが話題性という点では人気ゲームのフォロワーゲームとか、一発ネタをぶち込んでくるゲームも「話題の新作」として紹介されやすい傾向があります。個人開発ならその辺を狙うのもアリかもしれません。

こんなゲームはSteamで売らないほうがいい

では最後に、ここまでの内容を踏まえて「自作ゲームをSteamでリリースすべきかどうか」を判断するためのアドバイスをさせて頂こうと思います。ズバリ言うとゲームが下記に該当する場合はSteamで有料販売しないほうがいいです。

  • クオリティがフリーゲーム以下のゲーム
  • 単純なアクションゲームや教育ゲーム等、人気がないジャンルのもの
  • 話題になるような尖った要素がないゲーム
  • 短編ゲーム(目安:クリアまで2時間未満のもの)
  • 日本語にしか対応していないゲーム

まず第一に、純粋に低クオリティなゲームは論外です。面白くなさそうなゲームは話題にならず売れないし、低評価を食らう可能性も高いのでせっかく苦労してSteamでリリースしても返り討ちに遭う危険性があります。間違ってもアセットそのままのゲームとか、ツクールで作ったひねりのないゲームとかをリリースしないほうがいいでしょう。

次に第二に、仮に品質は良くても普通のアクションゲームだったりゲーマー受けしないジャンルのゲーム(教育ゲームなど)もやめておいたほうが無難でしょう。特に教育ゲームはゲーマーたちが集うSteamでは需要が全くないので、リリースするならスマホ向けにしたほうがいいと思います。

あと第三として短編ゲームをSteamでリリースするのはあまりおすすめできません。なぜならSteamはプレイ時間が2時間未満のゲームは簡単に返品できる仕組みになっているからです。もちろん短編でも高評価を受けてものすごく売れているゲームもありますが、そんな作品はほんの一握りなので自分の短編ゲームも売れるなんて思ってはいけません。

それから最後に意外な盲点を言うと、日本語にしか対応していないゲームはSteamで売る旨味があまりないので避けたほうがいいかもしれません。というのはSteamは世界的なプラットフォームでありメインのお客さんは海外のゲーマーだからです。

…まあSteamでは日本人のお客さんも決して少なくはないですし、アニメ風のゲームなど内容によっては日本人による購入が大半を占める場合もあります。しかし基本的にはSteamではアメリカ人と中国人のお客さんが大多数であるという点は知っておくべきです。Steamでゲームを売るなら最低限英語への対応くらいはしておきましょう

例外として「Steamでフリーゲームを公開する」という手もある

ただし上記はあくまでも「有料販売」する場合の話です。例外としてはSteamで自作ゲームをフリーゲームとして公開するという手もあります。

もちろんその場合は登録料が戻ってくる可能性はゼロなので実質15000円の費用がかかってしまいますが

  • 自分のゲームがSteamでどの程度通用するか試したい
  • ゲームを無料で公開してSteamでの知名度を高めたい

という戦略をとる場合は十分ありだと思います。その点も踏まえてSteamでリリースするかどうかを判断してください。

おわりに

以上、自作ゲームをSteamで売る前に知っておいていただきたい点について一通りご説明しました。

まあゲーム開発者の方の中には「Steamでゲームをリリースするのが夢だ」という方もいらっしゃるでしょうから、どういうゲームであれあなたがSteamでゲームをリリースすることに水を差すつもりはありません。しかし上記のような点を予め知って頂くことで大失敗は予防できると思います。ぜひ参考になさってください。

この記事がゲーム開発のお役に立てば幸いです。