今回はゲーム開発におけるAIの活用方法に関する話題で
- ChatGPTなどの対話型AIはゲーム開発でガンガン活用すべき(特に個人開発の場合)
- ゲーム開発におけるAIの具体的な活用事例について
- ただしAIはAIでも画像生成AIをゲームに使う場合は慎重に…
といった内容になっております。
対話型AIや画像生成AIなどの生成AIが一般の人たちに公開されてからもう2年も経ちましたが、正直なところ未だにゲーム開発でAIを活用できていない方も多いのではないでしょうか?
おそらくゲーム開発においてAIを活用できていない理由は
- 具体的な活用方法がよく分からない
- 著作権など権利的な部分が怪しいからあまり使いたくない
といった感じだと思います。…ですが、AIを活用しまくっている私からすれば正直言ってゲーム開発でAIを使わないのは損です。
そこでここではゲーム開発におけるAIの具体的な活用事例や使いこなすためのコツ、それから注意点などを詳しく解説していきますね。
ChatGPTなどの「対話型AI」はゲーム開発でガンガン活用しよう
対話型AIをゲーム開発で活用したほうがいい理由
まずはじめに、ゲーム開発(特に個人開発の場合)においてはChatGPTのような「対話型AI」を積極的に活用すべきです。その理由は端的に言うと
対話型AIは優秀なアシスタントのような存在なので、対話型AIを使うことによってゲーム開発がかなり捗るようになるから
です。
このあと具体的な活用事例をご覧いただければわかると思うのですが、対話型AIはアシスタントとしてとても優秀で専門的なことを分かりやすく教えてくれたり相談に乗ってくれたりします。しかも人間とは違って好きな時に好きなだけ相手をしてもらえるため困難が多いゲーム開発では特に便利なのです。
つまりAIを使うということは「仕事ができていくらでもこき使える都合のいい部下」を雇うのと同じようなものだと言えます。それなのにいつまでもAIを使わず一人で黙々と頑張っているというのもなんだか損だと思いませんか?まだゲーム開発でAIを使っていない方はこの機会に今日からAIを使い始めることをお勧めします。
主な対話型AIの紹介
ちなみに、おそらく皆さんご存じかと思いますが主な対話型AIサービスとしては次のようなものがあります。
- ChatGPT:
言わずと知れた対話型AI。無登録でも使えますが登録したほうが高性能なモデルを使えます。個人的にはこの中ではもっともフレンドリーで使いやすいです。詳しい長文を出力する傾向があり何かを理解したいときにはありがたいのですが、回答速度はそんなに早くないので他のAIと比較すると待ち時間が長く感じます。 - Claude:
端的で的確な回答をする対話型AI。回答速度が速く、生成される文章が短めな傾向にあるので待ち時間が少ないのが特徴です。とても優秀ですが他の対話型AIと違って直接Webページを参照する機能がないようなのでそこだけ注意。 - Copilot:
Microsoftが提供している対話型AI。回答の長さは短めです。最近UIが大幅に変わって使いづらくなったのが玉に瑕。 - Gemini:
Google製の対話型AI。他の対話型AIと比較すると時事問題に多少強い点や、Googleアカウントを持っていればそのまま使える点が強み。
私は上記全てのサービスを使っていますが、いずれも得意・不得意がありますし回答内容もそれぞれ個性があります。そのため一つだけを使うのではなく複数のサービスに登録しておいて使い分けるのがいいと思います。
対話型AIのゲーム開発への具体的な活用方法
ではここから対話型AIを自作ゲームに活用する際の具体的な活用方法を色々ご紹介していきます。主な活用事例は次のとおりです。
- 検索エンジンでは答えが得られないことについて質問する
- ソースコードを書いてもらう
- 自分で書いたソースコードのレビューをしてもらう
- 他人が書いたソースコードを解説してもらう
- ゲーム内容のアイデアを一緒に考えてもらう
- ゲーム内テキストの翻訳をしてもらう
- 開発の悩みや愚痴の相談相手になってもらう
活用方法1:検索エンジンでは答えが得られないことについて質問する
まず一つ目の活用方法は検索エンジンでは答えを得にくいことについて質問することです。
ゲーム開発においては
- 専門的な情報や日本語の情報が少ないことについて知りたい
- 具体的なキーワードは分からないが知りたいことがある
といった場面がよくあります。このようなときに検索エンジンでググっても答えが見つからないことが多いのですが、対話型AIに質問すれば欲しい情報を得られる可能性が高いです。
例えば、サンプルとして下記のような事例を考えてみましょう。
【ゲーム開発で発生した課題の例】
UnityのTerrainで草の密度を高くしたい。しかし自分で試した限りでは草がまばらになってしまい密度を高くするやり方が分からない
このとき検索エンジンで「terrain 草 密度」などとググっても、ニッチすぎるせいか断片的な情報しか出てきません。
しかしこの課題についてChatGPTに質問してみると…
- Terrainの設定や草のプロパティを確認してみましょう
- 草を増やしすぎるとパフォーマンスに悪影響を与えるので注意してください
- 標準機能では限界がある場合はアセットを使う手もあります
といった具合にまとまった情報を一通り教えてくれるのでかなり役立ちます。このように対話型AIは検索しても答えを得にくい情報を知りたいときに非常に便利です。
活用方法2:ソースコードを書いてもらう
次に二つ目の活用方法は対話型AIにゲーム用のソースコードを書いてもらうことです。対話型AIはプログラミングもお手の物で、100行くらいのソースコードであればあっという間に書いてくれます。
例えばUnityで2Dアクションゲームの接地判定を作りたい場合は、ChatGPTに下記のように頼めばC#スクリプトを書いてくれます。
【プロンプト】
Unity用のC#スクリプトを書いてください。横スクロールの2Dアクションゲームにおいて、プレイヤーキャラクターの接地判定処理を作りたいです。どのようなC#スクリプトを書けばいいと思いますか?
生成されたC#スクリプトは下記のとおりです。
using UnityEngine;
public class PlayerGroundCheck : MonoBehaviour
{
[Header("Ground Check Settings")]
public Transform groundCheckPoint; // 足元のチェックポイント
public float groundCheckRadius = 0.2f; // 判定用円の半径
public LayerMask groundLayer; // 地面のレイヤーマスク
[Header("Debug Settings")]
public bool showDebugGizmo = true; // デバッグ用にGizmoを表示するかどうか
private bool isGrounded; // 接地判定フラグ
void Update()
{
GroundCheck();
}
// 接地判定のロジック
private void GroundCheck()
{
// 指定した位置にあるColliderを判定
isGrounded = Physics2D.OverlapCircle(groundCheckPoint.position, groundCheckRadius, groundLayer);
}
public bool IsGrounded()
{
return isGrounded;
}
// デバッグ用に接地判定の範囲を描画
private void OnDrawGizmos()
{
if (showDebugGizmo && groundCheckPoint != null)
{
Gizmos.color = isGrounded ? Color.green : Color.red;
Gizmos.DrawWireSphere(groundCheckPoint.position, groundCheckRadius);
}
}
}
若干変な書き方をしてありますが、トータルで見るとこのスクリプトは正確でそのままUnityで使うことができます。
対話型AIにソースコードを書いてもらう際の注意点
ただし今のところ対話型AIは自分で書いたソースコードの動作確認までしてくれるわけではないので、得られたコードの動作確認はあなたが行う必要がある点には注意してください。とくにニッチなコードを頼むと所々間違っている部分が混ざることもよくあります。
このようなことを考えると出力されたコードをそのままコピペして使うのではなく、あくまでもたたき台として利用することをお勧めします。
活用方法3:自分で書いたソースコードのレビューをしてもらう
三つ目の活用方法は対話型AIに自分で書いたソースコードのレビューをしてもらうことです。
自分で書いたコードでは上手くゲームが動かない場合や改善点を知りたい場合は、対話型AIにソースコードを投げてみるとヒントが得られるかもしれません。自分では気づかなかったミスを指摘してもらえたり、さらにいいコードを書くための改善点を教えてもらえたりします。
活用方法4:他人が書いたソースコードを解説してもらう
四つ目の活用方法は対話型AIに他人が書いたソースコードの解説をしてもらうことです。
ゲーム開発をしていると拾い物のソースコードの意味がよく分からないことがあるのですが、そういう場合も対話型AIにソースコードを投げて「解説して」とお願いすればコードを詳しく解析したうえで分かりやすく解説してくれます。
活用方法5:ゲーム内容のアイデアを一緒に考えてもらう
五つ目の活用方法は対話型AIにゲーム内容のアイデアを一緒に考えてもらうことです。
ゲーム開発をしていると、作るゲームによっては
- ゲームのストーリー
- キャラクターや世界観の設定
- キャラクター同士の会話
- ステージ構成
- アイテムや敵キャラの命名
といったゲーム内容・データの制作作業の物量が多くて開発の負担になることがありますよね。このようなときは対話型AIと一緒に考えると作業が捗ります。AIだと納得いくまで壁打ちできるのがいいところです。
ちなみに、上記の作業の中ではキャラクター同士の会話を考えるときに対話型AIが特に役立ちます。キャラクターの設定(性格や口癖など)をAIに教えて「このキャラクターになりきって」とお願いすればその通りに振舞ってくれるので会話のシミュレーションが容易になる(=このキャラはこういう受け答えをするだろう、と見当をつけやすくなる)という使い方があるのです。この方法はかなり応用が利くのでぜひ覚えておいていただければと思います。
活用方法6:ゲーム内テキストの翻訳をしてもらう
六つ目の活用事例は対話型AIにゲーム内テキストの翻訳をしてもらうことです。
翻訳といえばDeepLやGoogle翻訳などを使っている方が大半かと思いますが、ゲーム内テキストの翻訳に限って言えば対話型AIのほうが便利です。なぜなら
- ニュアンスや要望を伝えればそれをくみ取って翻訳してくれる
(例えば「ゲームらしい翻訳をして」とお願いするなど) - なぜその翻訳になったのか?という理由を尋ねることができる
からです。
ゲームの場合はキャラクター同士の会話文の翻訳が大半を占めると思います。この会話文において怖いのが「変な翻訳のせいで興ざめする」「意味が伝わらずプレイに支障が出る」といったことだと思います。
この点において、普通の翻訳ツールだと会話文が苦手でぎこちない訳になったりしますし、平気で誤訳を出してくる割に「なぜその翻訳結果になったのか?」という理由が分からないことが不便だと言えます。しかし対話型AIであればニュアンスを伝えればそれをくみ取ってくれる上に翻訳結果の理由を聞くことができるので、普通の翻訳ツールよりもかなり安心して活用することができます。
活用方法7:開発の悩みや愚痴の相談相手になってもらう
最後に七つ目の活用事例は対話型AIにゲーム開発の悩みや愚痴の相談相手になってもらうことです。
特に個人でゲーム開発をしている場合は理解のある人や相談できる人が周囲にいない…という場合も多いかと思いますのでAIに相談相手になってもらうといいでしょう。AIが相手なら内容を気にせず好きなだけ悩みや愚痴を言えますし、必要ならアドバイスもしてもらえますから一人で悶々とするよりもよっぽど健康にいいです。
もちろん頼りになる友達とかがいればそれが一番だとは思いますが、なかなかそうもいかないよという方はぜひ悩み相談にAIを活用してみてください。
一方で「画像生成AI」を自作ゲームに使う場合は慎重に…
さて、ここまでは対話型AIのゲーム開発への活用事例について詳しく見てきました。このように対話型AIは上手くゲーム開発に活用すると非常に便利なのですが、一方でAIはAIでも「画像生成AI」を自作ゲームに使う場合は慎重な判断が求められます。
下記ではゲーム開発で画像生成AIを使う際の注意点を簡単にご説明しておきますね。
ゲーム開発で画像生成AIを使う際に知っておくべきこと
- 画像生成AIは反感を買いやすく問題視される傾向にある
- 画像生成AIを使ったゲームを売る場合、ほとんどのストアでそのことを明記する必要がある
- 一部のストアでは売り場が隔離されておりあまり売れない場合がある
画像生成AIは反感を買いやすく問題視される傾向にある
まず、普段からSNS等をご覧になっている方はよくご存じかと思いますが画像生成AIには熱心なアンチ(反AI派)がいるくらいなので、画像生成AIで作った画像をゲームに使うと反感を買う可能性があることは予め知っておいた方がいいと思います。AI製の画像をゲームに使ったら何かしら文句を言われるだろうな…くらいには何となく覚悟しておきましょう。
ただ最初から覚悟の上ならまだいいのですが一番困るのが意図せずAI製の画像を使ってしまった場合です。最近はAI製の画像が素材として出回っていたりするので、知らないうちにそれを使ってしまうとリリース後に反AI派から攻撃されたりストアでややこしい手続きを踏む羽目になったりする可能性があります。
したがって素材を購入して使う場合はそれがAI製なのかどうかをきちんと確認したほうがいいでしょう。特に記載がなくAI製かどうかわからない場合は購入を控えるか、事前に作者に確認するといった対応をとることをお勧めします。
画像生成AIを使ったゲームを売る場合、ほとんどのストアでそのことを明記する必要がある
次に、画像生成AIを使ったゲームを売る場合はほとんどのストアでそのことを明記する必要がある点には注意が必要です。
最近はAI製の画像を使ったゲームの販売を許可しているストアが多くなってきました。ただしゲームを登録するときに「これはAI製の画像を使っています」とストア上で明記しなければならない措置をとっているところがほとんどです。AI製の画像を使ったゲームを販売する場合はそのことを正直に申告するようにしましょう。
一部のストアでは売り場が隔離されておりあまり売れない場合がある
また↑の話に関連して、DLsiteなど一部のストアではAI製画像を使ったゲームは隔離された売り場で販売される場合があります。売り場が隔離されているということはそこを見る人が少なくて売れにくいということでもあるので、その辺は予め覚悟しておくようにしましょう。
ゲーム開発で画像生成AIを活用できるのはまだまだ先な気がする
上記の内容を踏まえると、画像生成AIはまだまだ風当たりが強く堂々とゲーム開発に使える段階ではないと言えます。
もちろん画像生成AIは絵を描くのが苦手・面倒だという方にとってはまさに救世主なのですが、具体的な法整備やルール作りがされない限りは活用しづらいのが現状ですね。将来的にはガンガン活用できるようになることを願うばかりです。
おわりに
以上、ゲーム開発にAIを活用するための具体的な事例や注意点などを詳しくご紹介しました。
対話型AIはゲーム開発で大活躍してくれます。まだ活用できてないよという方はこの機会に活用してみることをお勧めします。また、画像生成AIに関してはゲーム開発で活用するのは時期尚早だとは思いますが、便利なのは間違いないですから今のうちに活用方法を模索してみるのは十分ありでしょう。
いずれにしてもゲーム開発に役立つAIを活用しない手はありません。ぜひ上記の内容を参考にしていただき、ゲーム開発にAIを取り入れて頂ければと思います。
この記事がゲーム開発のお役に立てば幸いです。