個人開発ゲームの値段・価格設定に関する話。一体いくらで売ればいいのか?

自作ゲームの値段・相場はどのくらい? ゲーム開発

個人でゲームを開発する際に悩ましい問題の一つに、「作ったゲームをいくらで売るか?」というものがあります。やはり個人で頑張って作ったからにはなるべく利益を出したいところですが、下手に価格を高くすると全く売れないリスクもあるので困ってしまいますよね。

そこでここでは、Steamでインディーゲームを買いあさるのが趣味・かつ個人ゲーム開発者でもある私が

個人開発ゲームは大体いくらで売ればいいのか?

という点について自分なりの意見を書いてみようと思います。

注意:なお私は有料ゲームを何本も販売した経験がありますが、別にヒット作を出したわけでも何でもないので「こうすれば儲かる!」などと言える立場には全くありません。話半分に読んでいただければと思います。
また、この記事の内容は主に全年齢向けの買い切りPCゲーム市場の話であり、スマホゲーム・ソーシャルゲーム・コンシューマゲーム等だと話が変わってくると思うのでご注意ください。

結論:個人開発なら「1000円以下」が妥当

まず、いきなり結論を言ってしまうと

個人開発ゲームの価格は「1000円以下」が妥当

だと私は思います。これはあくまでもこの価格が上限であって、どんなゲームでも1000円で売ればいいというわけではないのでご注意ください。当然ながらクオリティが低いゲームやボリューム不足のゲームはこれよりも安くないと売れません

それでこの「1000円」という線引きの根拠についてはこの後説明する相場のところで書きますが、端的に言えば

個人開発で実現できるクオリティ・話題性を考えたとき、せいぜい1000円くらいが限度

だからです。やはり個人で作れる範囲のゲームというと、どうしても商業ゲームやインディーゲームと比較したときに見劣りしてしまうので高くても1000円が限界かなと思いますね。

Steam等でのインディーゲームの相場

では結論を見て頂いたところで、私がSteamで長年チェックしてきた色々なインディーゲームの価格をもとに「このレベルならこの価格だろう」という相場について詳しく説明しておこうと思います。細かい価格の違いはあると思いますが、個人開発ゲーム・インディーゲームは大体次のような価格帯になっています。

  • 無料:単なるフリーゲーム
  • 100円:有料作品初心者のゲーム
  • 300円:そこそこ慣れてきた個人開発者のゲーム
  • 500円:一般的な個人開発ゲーム
  • 1000円:高品質な個人開発ゲーム
  • 1500円:一般的な同人・インディーゲーム
  • 2000円:高品質インディーゲーム
  • 2500円:名作インディーゲーム

それぞれザッと見ていきましょう。

無料:単なるフリーゲーム

まず無料のゲームは単なるフリーゲームで、これを開発するのはボランティアみたいな人くらいでしょう。まあクソゲー・バカゲー・練習作であれば無料でも全く構わないと思いますが、本格的にゲームを作ったのであれば有料で売ったほうがいいに決まっているのでタダで配るのはバカバカしいと私は思います。

ただし例えば「Helltaker」のように無料で配って絶大な話題性を作る場合や、基本無料・課金で稼ぐタイプのゲームはこの限りではありません。

100円:有料作品初心者のゲーム

次に100円のゲームは「初めて有料ゲーム作りました!」というレベルの価格です。当然最安値なので儲けが出ませんし、かといって無料でもないので無名だと安いのに売れないという悲惨なことになりやすい価格でもあります。したがって

  • 初めてゲームを有料販売したらどんな反応があるか知りたい
  • ゲームを売るためにどんなことをしなければならないかを確認したい
  • クソゲーを有料で売りつけたい

といった場合以外はやめておいたほうがいいと思います。

ただ100円であればクオリティが低くても何とかなってしまう可能性が高いので、その点は強みと言えなくもないかもしれません。

300円:そこそこ慣れてきた個人開発者のゲーム

300円のゲームは初心者レベルから一段上がって最低限のクオリティが求められる価格帯になります。たかが300円ではありますが、ここから上の価格はバグがあったり操作性に難があったりすると容赦なく低評価をつけられるのでご注意ください。

また、低価格ゆえに利益を出しにくいので稼ぎたいなら中途半端な価格設定だと言えます。ただしバカ売れする場合は話が別で、例えば大きな話題となった「Vampire Survivors」はこの価格で莫大な利益を出しているものと思われます。

500円:一般的な個人開発ゲーム

次に500円というと個人開発ゲームではごく一般的な価格帯となります。この価格は300円のゲームと比較すると安定したクオリティが求められるようになり、加えてボリュームもある程度は意識しないといけなくなるため、少なくとも1年程度かけて作ったゲームが多い印象です。

このラインだとまだ低価格なので儲けとしては微妙なところですが、一般的な個人開発ゲームのクオリティと利益を天秤にかけるとこのレベルが丁度いい作品が多いかと思います。とりあえず迷ったらこの価格帯にすることを検討しても良いかもしれません。

1000円:高品質な個人開発ゲーム

さて桁が上がって1000円ともなると、個人開発ゲームとしてはかなりの品質とボリュームが求められます。一人で開発するなら年単位で丁寧に作り込んだゲームでないと売れない価格帯です。

なお正直なところ一つ下の500円~700円の価格帯でもかなり面白いゲームが買えてしまいますし、旧作のAAAタイトルも大規模セール時には1000円程度になったりするので、それを考えると個人開発ゲームとしてはこのくらいが限度というものです。これ以上の価格にするのは相当な力作・話題作でもない限り避けたほうがよいと思います。

1500円:一般的な同人・インディーゲーム

1500円は数人規模で開発した同人・インディーゲームとしてはごく一般的な価格です。Steamや同人ゲーム販売サイトをのぞいてみると大体このくらいの価格のゲームが多く、また開発にかかるコストと利益を天秤にかけたときに最も安定するのがこのラインのようです。

2000円:高品質インディーゲーム

さらに値段が上がって2000円ともなると、インディーゲームとして高いクオリティ&長く遊べるボリュームが求められます。というのも、この価格帯からはゲーム会社が作るような商業ゲームに近い土俵でジャッジされるからです。したがってこの価格のゲームを提供する開発者の多くは数人がかりで長年開発を行ったり、専門のパブリッシャーと契約して宣伝を強化するなど、より商業的な色合いが強くなってきます。

ちなみに、いちおう個人開発ゲームとしては「Bright Memory: Infinite」という有名なFPSがこの価格帯なのですが、それはこの作品がとんでもなくハイクオリティだから許されるのであって平凡な開発者が簡単に設定できる価格ではありません。というか個人的には「天才がたった一人でとてつもないゲームを作ってもこの価格なのか」と思ってしまうほどです。ゲーム業界の価格競争の激しさがうかがえますね。

2500円:名作インディーゲーム

最後に2500円はインディーゲームでいうと名作に匹敵するゲームだけが許される領域です。正直、個人的にはインディーゲームのクオリティでこれ以上の値段だといくら面白いと言われても買う気にはなりません。

というのも名作中の名作である「Slay the Spire」がこの価格帯だからです。もしこれ以上高価なインディーゲームだと、どうしてもSlay the Spireを基準にしてしまい「それよりも高いお金を払う価値があるのかな??」と疑問に思って買う気が失せてしまいます。

このようなことを考えると、よほどの力作でもインディーゲームの範疇だと2500円以上はかなり厳しいと思ったほうがよいかもしれません。

価格を決めるときのポイント

さてゲームの相場について一通り説明したところで、最後に自作ゲームの価格を決めるときのポイント的なものを2つご紹介しておこうと思います。

  1. 競合ゲームの価格を念入りに調査する
  2. セールのことまで考えた価格設定にする

ポイント1:競合ゲームの価格を念入りに調査する

まず個人的に価格設定の際に一番参考になったのはgamesindustry.biz様の以下のインタビュー記事で書かれていた一文です。

【ACADEMY】Steamのセールでの成功法とゲームの価格設定
経験豊富なデベロッパとValveがSteamの販売戦略,値引きへの取り組み方,価格設定のコツを議論する。 プレミアムなビジネスモデルを好むインディーズデベロッパの方は,Steamを中心にビジネスを展開…

「Grey Alien Games の創設者である Jake Birkett 氏は,「一部のインディーズが犯している間違いの1つは,自分たちがどれだけの努力をしてきたかで価格を決めることです」と氏は語る。「その代わりに,同じジャンルの類似ゲームの価格を見て,それをガイドとして使うべきです」

つまり競合製品の価格を調べて参考にしろというわけですね。

特に個人開発だと

  • じっくり時間をかけたから高めの価格にしたほうがいいかな
  • いや自分が作ったゲームなんて大したことないから、価格を安めに設定しようかな

という風に、まともに市場調査もせずに価格を決めてしまいがちです。しかしそれでは自分本位の価格になってしまい、高すぎて売れなかったり、逆に安すぎて損をしたりすることになってしまうのでちゃんと市場調査をしたほうがよいのです。この点は抜かりなく調べておきましょう。

ポイント2:セールのことまで考えた価格設定にする

それから2つ目のポイントは非常に個人的な意見になってしまいますが、個人開発ゲームの場合

  • 利益は出るが価格が高めで売れにくい
  • 数は売れるが価格が安くて利益が出にくい

の2択だったら前者のほうがずっとマシだと私は考えます。なぜなら前者はセールを活用して価格を調整し・さらにお得感を出すことが可能なのに対し、後者だと価格を調整する余地がなくなってしまい困ってしまうからです(※値上げはかなり印象が悪いのでまず行うべきではありません)。このことを考慮するとセールのことまで考えて少しだけ高めの価格設定にすると良いと思います。

おわりに

以上、自作ゲームを有料で販売する際の価格設定について私なりの見解を詳しく書いてみました。もちろん参考にしていただければ嬉しいのですが、人によっては「いやそれはちょっと違うかな…」という部分もあるかもしれません。ただその場合はご自身の意見を尊重していただければと思います。

まあいずれにしてもゲーム開発はイバラの道であることは確かであり、ゲームが完成した暁にはそれ相応のリターンがあることを望むのは当然のことだと思います。ただ価格設定でミスるとせっかくの利益が失われてしまいますので、ぜひ慎重に考えて価格を決めて頂きたいなと思います。

この記事がゲーム開発のお役に立てば幸いです。