今回は画像生成AIで作った美少女イラストの弱点克服に関する話題で、タイトルの通り
をまとめてみるという内容になっています。
Stable Diffusionをはじめとした画像生成AIで美少女イラストを大量に生成していると、正直なところ
- 色々調整しているけど、なんかどのイラストも似たような感じで飽きてきた…
- もうちょっと「AI臭」を消したイラストを生成したいなぁ
と思うことがあります。私はAIイラストが好きだから日々研究しているのですが、そうは言っても自分で生成したイラストはもちろん・他所で見かけるAIイラストにしても、もう少し個性的なAIイラストがあってもよさそうなものだよな…と若干思わなくもありません。
このような次第で、ここでは
- AIイラスト特有の「AIっぽさ」の正体について
- AIっぽさを消すためにはどうしたらいいのか?
といった点について私なりの見解を書いていきますね。
【注意】
- 下記の「AIっぽさの原因」として挙げている要因は執筆時点のものです。今後モデルの改良などが進むと改善されるかもしれません。
- 身も蓋もない話をすると現状ではAIっぽさを完全に消すのは至難の業です。頑張って工夫しても見る人が見たらAIだとバレます。かくいう私もそこまで技術力があるわけではないので、びっくりするような解決策をご提示できるわけではない点は予めご了承ください。
AIイラストの「いかにもAIっぽい感じ」の正体とは?
まず「AIっぽさ」を消すためには、その正体が果たして何なのかを追求しておく必要があります。そこでAIイラストを万単位で見てきた私が自分なりに考えてみたところ、だいたい次のような原因があるのではないかと見当をつけました。
- いわゆる「マスピ顔」をしている
- 手や指の描写が怪しい
- 独特な質感の塗り
- よく見ると瞳の塗りが雑・形が変
- 妙に躍動感がある髪の毛
- やけに描写が細かいけどよく見ると適当
それぞれ詳しく見ていきましょう。
原因1:いわゆる「マスピ顔」をしている
まず一番にして最大の原因は、イラストのキャラクターが「マスピ顔」をしていることだと思います。マスピ顔というのは「マスターピース顔」の略で、例えば下記のイラストのようなAIイラストに典型的な顔立ちのことを言います。
使うモデルによって顔立ちに違いはあるものの、人気のモデルを使っている場合はよく上記のような顔立ちになります。なので見る人が見たら「あ~、これはAI製だな」ってすぐに判別できます。
…まあこれはこれで綺麗でかわいい顔立ちですから、決してマスピ顔を否定するわけではありません。しかしどのイラストも似たような顔立ちだとさすがに飽きてしまいます。
正直この辺は何とかしたいところですが、「こういう顔立ちがいいんだな」と学習しているモデルを使う限りはマスピ顔になるのは避けられないかもしれません。これは解決が難しい問題ですね。
原因2:手や指の描写が怪しい
次に2つ目の原因としては手や指の描写が怪しいという点が挙げられます。これは皆さんご存じのとおり、執筆時点の画像生成AIは手を上手く描くのが苦手なので指がメチャクチャになっているイラストを割と平気で生成したりします。
とはいえこの件については最初期から弱点だと分かっており、最近のモデルやControlNetを使うなどすると比較的上手く描写できるようになってきています。しかしAIが完全にこの弱点を克服するまでにはもう少し時間がかかりそうな気がします。
原因3:独特な質感の塗り
さて3つ目はAIイラストには独特な質感の塗りが多いこともAIっぽさを醸し出す原因になっています。先ほどのマスピ顔のサンプルイラストのように「上手いけどなんかAIっぽさがある塗り」になることが多い印象です。
…まあ塗りに関しては使うモデルによって違いがあり一概には言えません。ただAIっぽくなる原因としては、多くの方が同じ系統のモデルを使うことで同じ塗りのイラストが氾濫することになってしまい、特定の画風が急激に陳腐化して何も知らない人でも「きっとAIで量産しているんだろうなぁ」と何となく察しがつくことになるのだろうなと思います。
したがってこの欠点の克服ポイントとしては多くの人が使っているモデルをそのまま使わないことが重要になりそうです。
原因4:よく見ると瞳の塗りが雑・形が変
4つ目はAIイラストをよくよく見ると瞳の塗りが雑だったり、瞳孔の形が変だったりする点です。例えば下記のイラストをご覧ください。
パッと見だと何の問題もなく上手く描けているように見えるのですが、よく見ると瞳が適当に塗られていたり瞳孔の形が歪んでいたりしています。これも厳選されていないAIイラストでよく見られる弱点です(※きれいな瞳になる場合もあります)。
基本的に絵師さんが手描きする場合は特に瞳にこだわる方が多く、上記のように瞳の描写を疎かにすることはあまりないので、これも違和感の原因の一つになっていると思われます。
原因5:妙に躍動感がある髪の毛
5つ目はAIイラストは髪の毛に妙に躍動感があるイラストになることが多い点です。下記のイラストをご覧ください。
AIでロングヘアの女の子を生成すると、上記のようにやたらと躍動感のある髪の毛の描写をしたイラストが割とよく生成されます(※もしかしたら呪文にもよるかもしれませんが…)。これに関してはモデルによる違いはあまり無いようで、色々なモデルを試してもこういう風になる傾向があるような気がします。
これも一概に悪いとは言えませんが、こういった部分も似たようなイラストが量産されるとなると違和感につながるのかなと思います。
原因6:やけに描写が細かいけどよく見ると適当
6つ目の原因は、(原因4と少し重なる部分として)AIイラストはディテールが描きこまれている割によく見ると適当に描かれているものが多い点です。例えば下記のイラストの細部にご注目ください。
パッと見の印象はとてもいいですよね。しかしよく見ると
- キーボードのキーの描写がすごく雑
- ディスプレイに映っている情報も歪んでいる
- 髪の毛の細かい毛の描写が適当
- 背景の小物も歪んでいる
といった問題があります(※上記は低解像度のイラストなので特に顕著です)。
このように現在の画像生成AIには
- 一見すると細かい描写で情報量は多い
- しかしよく見ると細部はゴチャゴチャ適当に描いているだけで、例えば熟練の絵師のようなこだわりや「重要ではない部分を上手く省略する」ようなテクニックには欠ける
等の弱点があります。
AIっぽさをなるべく消すためのテクニックまとめ
さて上記のように「AIっぽさ」の原因を洗い出してみると対策も見えてきます。もちろんすべてを改善するのは現状ではとても難しいのですが、割と簡単にできそうな対策に絞ると下記のようなものが考えられます。
- モデルをマージして画風の違いを出す
- 画風LoRAを適用する
- アップスケールで細部をうまく補完する
- 手作業で瞳に修正を行う
- 彩度やコントラストを弱める
それぞれ詳しく見ていきましょう。
モデルをマージして画風の違いを出す
まずはモデルをマージすることです。マージを行うことで元のモデルとは一味違う画風を得ることができ、配布されているモデルをそのまま使った場合よりも(多少は)独自性を出すことができます。
モデルの基本的なマージのやり方は下記の記事で詳しくご説明しています。簡単なのですぐにお試しいただけます。
例えば人気のモデルである「Counterfeit」と、ややマイナーな「Ambientmix」を3:2の割合でマージすると下記のように少し違う画風の美少女イラストになります。
Counterfeit | Ambientmix | マージモデル |
---|---|---|
まあ単純なマージだけでは大きな違いは出しづらいのですが、それでも多くの方が使っているモデルをそのまま使うよりはAIっぽさはマシになるでしょう。マージ自体もすぐにできますし、これはぜひ試して頂きたいと思います。
画風LoRAを適用する
次にモデルのマージでは画風を十分に変えきれない場合は画風LoRAを適用するという方法もあります。LoRAモデルをうまく使えば画風を細かく調整できて便利です。
サンプルとして前回の記事で話題に挙げた私オリジナルのLoRAをウェイト1でConterfeitモデルに適用すると次のようなモノトーンの美少女イラストが生成されました。
自画自賛ですが渋くてかっこいいです。LoRAのウェイトを0にして生成した場合は下記のようなイラストが生成されるので違いは一目瞭然ですね。
もう少し調整したい場合は、LoRAを適用する際のウェイトを下げたり他の画風LoRAと組み合わせたりすることで画風をさらにコントロールすることができます。
ウェイト0.7 | ウェイト0.4 |
---|---|
アップスケールで細部をうまく補完する
三つ目はアップスケールで細部をうまく補完することです。低解像度のAIイラストでは細部が潰れてしまいAIっぽい感じが出てしまいがちですが、Hires.fix等を使ってディテールを補完することで多少はマシになるかもしれません。
アップスケール前 | アップスケール後 |
---|---|
ただディテールが改善されただけではAI感はぬぐいきれないので、これはあくまでも補助的な方法だとお考え下さい。
手作業で瞳に修正を行う
四つ目として、瞳の塗りが変になった場合は手作業で修正を行うとよいでしょう。先ほどご説明した通りAIで生成したイラストは
- 瞳孔の形が変
- ハイライトが描かれていないか、左右のハイライトが均等でない
といった問題がある場合が少なくないので、そのような場合はペイントソフトを使って修正することをお勧めします。程度にもよりますがブラシでちょっと加筆するだけなので難しくないはずです。
サンプルとして先ほどの美少女イラストの瞳を修正した例を掲載しておきます。
丸ブラシでほんの少し瞳の形やハイライトを加筆・修正しただけですが、だいぶ印象が良くなりました。
彩度やコントラストを弱める
五つ目は彩度やコントラストを弱めることです。AIイラストは彩度やコントラストが高い場合が多く、ギラギラした感じがあるのでそこを調整するのも有効だと思います。
実際にペイントソフトを使ってAIイラストのコントラストを落としてみると、(ちょっとわかりづらいですが)どぎつさが緩和されてAIっぽさが若干軽減した気がします。
元のイラスト | 彩度とコントラストを調整したイラスト |
---|---|
これも簡単にできるのでぜひ試してみてください。
余談:絵を描けるなら加筆するのが一番
最後に余談なのですが、やっぱりAI臭を消すための最善の策は自分で加筆することだと思います。現状だとAIが生成するイラストはかなり工夫してもAIっぽくなってしまいますので、あれこれ策をこねくり回すよりは自分で手を加えてしまったほうが早いでしょう。
まあ私も含めて「自分で美少女イラストを描けないからAIを使ってるんだよ」という方も多いでしょうからこんなことを言うのも野暮でしょうけどね…。
おわりに
以上、AIイラストの弱点やそれを改善するための方法をご紹介しました。
AIイラストは手軽に生成できる反面、似たようなキャラや同じ画風の絵が氾濫することで「なんかAIっぽいな」と思われてしまいやすいというデメリットがあります。ただし工夫すればAI臭をある程度軽減させることは可能ですので、ぜひ上記の内容を参考にしていただき、AIでも独自性の高いイラストを生成していただければと思います。
この記事が美少女イラスト生成の参考になれば幸いです。